ローグ×ダンジョン×RPGは、ストレスマッハの良ゲー!? 『Darkest Dungeon』(ダーケストダンジョン)

『Darkest Dungeon』(ダーケストダンジョン)プレイレビュー

ファミ通.comやファミ通Appに連載枠を持たせてもらっておりますが、今後はこちらのプライベートなブログでも、メディアの看板を背負わない勝手気ままなゲーム記事をチョロチョロと書いていきたいと思います。それも、テレビゲームやアプリに限らず、趣味のボードゲームやらリアル脱出ゲームのことなんかも書いていけたらいいな~……と。本当に好き放題な“素の文章”でいこうと思っておりますので、どうぞ覚悟して(?)お付き合いいただけたらなと思います!

さて。

ここのところヒマを見つけては、PCのゲーム配信プラットフォーム“Steam”で、好みのゲームの発掘作業を行っている。steamは……そう、膨大な財宝が眠る赤城山の麓とかバミューダ海域みたいな夢のある空間で、そこでは数々の隠れた名作が日の目を見るのを待っている。しかし、その膨大さは常軌を逸しているレベルで、例えるなら広大な青木ヶ原樹海の上空から1本の小枝を落とし、「ハイ、あの枝を探して持ってきてください♪」と命じられたのと同義と言っていい。なんのヒントもナシに好みのゲームにたどり着くことは、間違いなく至難の業だ。テキトーに選んで遊んだゲームが琴線に触れたなら、「それは奇跡です」と断言していい。

そんな中、最近は、Steam発のマニアックなタイトルが頻繁に、家庭用ゲーム機に移植される事例が増えてきた。プレイステーション4はもちろん、意外やNintendo Switchでも、そういったタイトルを遊ぶことができる。今回紹介する『Darkest Dungeon』も、そんな特異なゲームのひとつである。

『Darkest Dungeon』はSteamのほか、家庭用ゲーム機では、プレイステーション4、ニンテンドースイッチ、PS Vitaなどで発売されている。この中から俺が選択したのは、ニンテンドースイッチ。最近、こういったマルチプラットフォームで展開するタイトルに関しては、たいがいスイッチ版を買ってしまう。それは言わずもがな、寝る前にベッドに持って行ったり、外に持ち出しても遊べる利便性からで、このライフスタイルに慣れてしまうと「やっぱスイッチで買おう」となってしまうのである。

そんなこんなでスイッチ版を買った『Darkest Dungeon』。見るからに怪しい雰囲気満載だが、ゲームジャンル的には“ローグライクダークファンタジーRPG”というものになるらしい。“ローグライク”ってのは、根本から説明すると1本のコラムになってしまうので端折りまくるが、簡単に書くと“潜るたびに構造が変わるダンジョンが舞台で、無事に帰還できないと手に入れたアイテムや経験値なんかがすべてパーになるゲーム”といったところか。このシステムのミソは、“無事に戻れるかどうかのスリルがたまらない”という部分なので、コンピューターは懸命にプレイヤーを殺しにかかってくる。ゆえに難度は高めになりがちなのだが、それをクリアーするために一生懸命準備をしたり、石橋を叩いて叩いてけっきょく渡らない……ってくらい慎重な冒険が好きな人には、たまらないスルメゲーになってくれるのだ。そして『Darkest Dungeon』も、しっかりとそのレールに乗ってくれているのである。

『Darkest Dungeon』の舞台は……よく知らないのだが(おい)、拠点となる古びた街にはいろいろな施設がある。


▲街の全景。なかなか雰囲気のあるグラフィックだ。施設はそれぞれレベルがあり、ダンジョン内で拾ってくる素材を駆使して成長させることができる。

ここで“ヒーロー”(ダンジョンに潜る冒険者ですな)を雇って4人パーティーを作り、毎回毎回マップが変わるダンジョンに潜行してクエスト(ダンジョン内の部屋をすべてチェックする、特定のボスモンスターを倒すなどいろいろある)をクリアーするのが目的だ。


▲ダンジョンごとに難度や深さが決められている。深いダンジョンでは、冒険の途中でキャンプを張って態勢を整える……といった作業が必要になってくるので、初心者は距離の短いダンジョンを周回してお金を貯める(重要!)のが得策。


▲4人連なって、画面右に向かって進む。ところどころにトラップがあったり、敵が待ち伏せていて戦闘になったりする。この4人の並び順も重要で、遠距離攻撃しかできないヤツが先頭にいたりすると、ただの地蔵と化してしまう。特性を考えて配置することが必要なのだ。

ダンジョンをウロついていると、たびたび戦闘になる。

戦闘は、コマンド選択式。ヒーローごとに、近接攻撃、遠距離攻撃、バフ掛け、回復……などなど特徴的な行動、スキルが用意されているので、戦局によって使い分ける。……って、ぶっちゃけ珍しくもないシステムだな(身も蓋もないが)。

しかし!!!

ここで非常に重要になってくるのが、おそらく『Darkest Dungeon』にだけある恐怖のステータス“ストレス”なのである!! 現代社会人(とくにサラリーマン)と同様、ストレスを巧みにコントロールできないと重要な場面で大チョンボを犯し、取り返しのつかないことになってしまうのだッッッ!!!(興奮)

ストレスは、そのヒーローの性格にもよるのだが(これがまた驚くほど細分化されている)、さまざまな場所で受けてしまう。戦闘中だと、クリティカルヒットを喰らったり、状態異常に罹ったりしたら、

(lll-ω-)ズーン……

こんな感じでストレスが溜まる。これはまだ納得がいくのでいいほう(?)で、場合によっては隣のヒーローが悪態をついたりしただけで、

(´・ω・)なんだよコイツ……。うっせーな……。

てな感じでストレスが積もったりするのだ!(マジです) オマエ、ちょっと心弱すぎじゃね?? しっかりしろよ!!! もう中堅どころの年齢だろ!!? ……なんて画面に向かって吠えていると、またまたストレスが溜まってしまうかもしれない。ヒーローたちは、揃いも揃って凶悪犯みたいな顔をしているが、こう見えてデリケートなのだ。


▲ストレスが溜まった瞬間。ゲーム中、どこでも見られる光景です。

そして、ストレスが臨界点である100を超えてしまうと、恐ろしいことにヒーローは精神崩壊する!!!


▲ぎゃああああああ!!!

その瞬間、ヒーローはネガティブな“奇癖”を発症し、戦闘中に命令を聞かなくなるばかりか、ヘタをすると味方に攻撃をしてきて大ダメージを与えたりもするからタマラナイ。


▲精神崩壊すると、ブツブツと危ないセリフをつぶやき出したりする。攻撃をサボるくらいなら、まだかわいいほうだ。

しかし、本当に稀な出来事だが、精神力がストレスを凌駕すると“覚醒”するヒーローが現出したりする。精神崩壊とは正反対のポジティブな奇癖が発動して、戦闘で活躍してくれるようになるんですねえ。


▲ストレスに打ち勝ち、覚醒したヒーロー。俺も、こんな強い精神力が欲しいよ……。

ストレスに注意を払いつつダンジョン内を探索(松明の明かりが弱くなっただけでストレスを溜め込む輩もいるので注意)していると、ボスが現れることもある。


▲ジャーン……。


▲ザコでは見られない、特殊な攻撃を頻繁にくり出してくるのがボスモンスターの特徴だ。これはボス“セイレーン”に魅了され、ヒーローが敵側に寝返ってしまったところ。当然、こっちに斬りかかってくる!

序盤の、ほとんど育っていないパーティーでは、ボスを倒すことはほぼ無理。なので無茶をせず、街に逃げ帰るのもひとつの手だ。……まあ逃げると、多大なストレスを負うことになるけどな!!www(苦笑)

このようにダンジョンと街を往復していると、徐々にヒーローが育ってくる。


▲ヒーローの詳細画面。それぞれポジティブな奇癖とネガティブな奇癖を持っていて、ステータスに少なからず影響を及ぼしている(たとえば“盗難癖”は拾ったアイテムをかっぱらったり、“神経質”はストレスを10%増で感じたりw)。ネガティブな奇癖は治療することもできるが、シャレにならないくらいの大金が掛かったりするので、やむなく「そういう性格のヤツもいるよな……」と飲み込まざるを得ない。

それに合わせて街の施設を強化することで、より強いヒーローを雇えるようになったり、装備のレベルを上げられるようになったりするわけだが、ここにきてようやく、ゲームのサイクルが回り出すのを実感するはず。つまり、ここまでがんばらないとゲームの旨味を感じにくい……ってくらいハードルは高いのだが、逆に言えば乗り越えさえすれば、冒頭に書いた“やめられないスルメ的なうまさ”が滲み出てくることを保証します。

パーティーを組む段階から「あーでもねえこーでもねえ!」と吟味を重ね、ダンジョンでは受けるストレスに一喜一憂しながらギリギリの攻防をする……というマゾな仕様に魅力を感じられるなら、驚くほど楽しめるゲームになる。

それも長く、ね。

秋の夜長に、じっくりと楽しんでいただきたい1本です。